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海上ばなな

SDレビュー(1997年)受賞作品

形状から海上バナナと名付けた1300m×最大幅60mの細長い敷地は、高台に降った雨が湧き水となって現れているが、それを覆い隠すようにアシが密生する湿地である。

 地図上で町の中央に横たわっているが眠っているようなこの場所を、本当の意味で町の人々の拠り所となるような、特別な存在とすることがこの計画の目的である。多様な利用者の訪れる場所では、私達自身が主体性をもった主(あるじ)であるべきと考え、レジャー施設で感じる「ここである行動をしなくてはいけない」という「半強制な存在」を感じさせない場所=ノーマンズランド(主のいない場所)を目指した。

 手法として、プロジェクトの段階的な整備も考慮しながら、7種の点・線・面的な装置を設定した。それらは二つの機能を満たすことを条件として計画された。一つは特定の行動にのみ用をなすのでなく、複数の行動を許容する機能である。もう一つは、ここの環境を再認識する「ものさし」としての機能である。漠然と自分の隣りにあった自然を、「ものさし」を挿入することで、特性(この場所の長さや特殊な形状・水が湧き、湿地であること・アシの生命力や光と風など)とその変化を発見してゆける機能である。

 ノーマンズランドが環境や自分自身に対して、思索・発見・覚醒の場所となるために設計者が関与できることは、唯一その二つの条件を忠実に満たすことと考えている。

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