旧園舎は防災街区密集整備事業の対象となり、代替地への移転を余儀なくされた。移転場所は西新井駅前の再開発地の最外周部。
新市街と旧市街のエッジに建つ保育園は、これからの街の変化と共に、保育をめぐる社会状況の変化をも受け止める作りでなくてはいけない。
結果、厚いコンクリートの壁で包み込む構成を採った。内部では耐力壁は必要なくなり、外からの視線や防犯的にも守られたフレキシブルなスペースが生まれた。各階には外階段で連続した縁側が設けられ、子供達は旧園舎と同様に直接保育室に登園できる。
内部仕上げは木質素材を用い、子供の活動範囲での事故防止のために建築金物を使わず、彫り込み引手や突起物をなくすべく革紐取っ手などを製作した。また空調の考え方は、床下にまんべんなく空気を対流させて子供の居住域の安定した熱環境目指した。湿度調整にはデシカントシステムを用い室内空気質の向上を図った。
周辺の空地は今後何らかの用途で埋まっていくことになるだろうが、厚い壁の保育園が砦のような存在感で二つの街区を調停しながら、街の変化と社会の変化に対応していくことを願っている。