東京理科大学理工学部創設50周年記念デザインコンペ
<利根運河 夢の架橋> 佳作受賞
過去と未来を架け渡すシンボル
人工的に作られた利根運河は、長い年月を経て水位が変わり、当時は川底だった部分も緑の河原へと変化した。東京理科大学理工学部の半世紀を記念した橋は、この運河の長い歴史に呼応し、これからの年月に耐えうる強度を持たなければならないと考えた。暮らしや環境の変化を許容し、長い時間をかけて自然の一部となっていくような、人工物でありながら親自然的な橋を計画した。
二つの橋の中継地点と人が集まる場所
運河の開通によって分断された土地を繋ぐものとして架かる橋は、交通の動線としてだけでなく、人が集まれる場である役割を担う必要がある。計画地は、理窓会自然記念公園の南側に位置する場所である。両岸には人が集まれるような広がりのあるスペースがあり、樹木の生い茂った緑地が残されている。ランニングや散策する人にとっては、ふれあい橋と柏大橋間のほぼ中間に位置しており、理窓会自然記念公園の出入り口としても機能する。両岸の歩道からそれぞれの緑地を結ぶ様に散策路を設けることで、人の流れを呼び込むような配置とした。
幾何学が生み出す風景
形状については、豊かな自然に対比的な幾何学を用いることで相互の魅力を引き出す事を考えた。25m四方のプレートに円弧を描き尾根をつくるように折り曲げることで、構造の安定性を確保し、人が集まる緩やかな丘や橋下の空間を生み出した。橋としては明確な通行のルートを持たず、縁から川を覗き込んだり、小高い場所で座ったり寝転んだりする事が出来る。橋下の空間はアーチを描いた日影の場所であり、自然環境の観測、観察の場としての役割を持つ。幾何学によって制御された一枚のプレートは、多様な見え方や場所を生み出す。